自動車、家電、産業機器など、私たちの生活を支える「組込システム」。その開発を担う組込エンジニアには、汎用的なプログラミングスキルだけでなく、ハードウェアと密接に関わる独自の知識や経験が求められます。ここでは、経験者がキャリアアップを目指すうえで押さえておきたい組込エンジニアのスキルをわかりやすく解説します。
組込エンジニアに必要な基礎スキル
C言語・C++の習熟度
組込開発の中心となるのはC言語。メモリ操作や効率的な処理が求められるため、ポインタや構造体、割り込み処理などを深く理解していることが重要です。
また、最近ではC++によるオブジェクト指向設計も取り入れられており、クラス設計やテンプレートの活用も武器になります。
OSやRTOSの知識
組込システムはリアルタイム性が求められるため、リアルタイムOS(RTOS)やLinuxベースのシステム理解は必須。
タスク管理、スケジューリング、排他制御などの仕組みを理解していると、複雑なシステムでも安定した開発が可能です。
ハードウェアの理解
CPU、マイコン、センサー、通信モジュールなどハードウェアとのインターフェースに関する知識は不可欠。
回路図を読み取り、レジスタ設定やI/O制御ができることは、上級エンジニアとしての信頼につながります。
開発工程に関連するスキル
ソフトウェア設計力
UMLを用いたモデリングや、階層化設計、状態遷移図を活用した設計スキルがあると、品質と保守性を両立できます。
デバッグ・テストスキル
組込開発では「想定外の動作」がつきもの。JTAGやICEなどのデバッグツール、ロジックアナライザやオシロスコープを用いた解析力が求められます。
加えて、ユニットテストや結合テストの自動化スキルも評価されます。
付加価値を高めるスキル
通信プロトコルの知識
CAN、Ethernet、UART、SPI、I2Cなどの通信規格を理解し、実装できるスキルは多くの案件で必要です。
セキュリティと品質保証
IoT化が進む中で、セキュリティ設計や暗号化処理の理解は今後ますます重要に。
また、ISO26262(自動車機能安全)など業界標準に準拠した品質保証の経験があると強みになります。
英語力とドキュメンテーション
海外製のデータシートや開発環境を使うことも多いため、英語での読解力・技術文書の作成力も欠かせません。
キャリアアップのための具体例
自動車分野での例
自動運転システムやADASでは、リアルタイム性と安全性が両立するスキルが必須。CAN通信、機能安全規格の知識を持つと即戦力になります。
家電・IoT分野での例
スマート家電やIoTデバイスでは、低消費電力設計やクラウド連携を意識したプログラミング力が重視されます。
産業機器分野での例
産業ロボットやPLC制御では、リアルタイム処理と高い信頼性が求められ、RTOSやEtherCATなどの知識がキャリアの武器になります。
まとめ:組込エンジニアに求められるスキルとは
組込エンジニアは「ソフトとハードの橋渡し役」として、多様なスキルを総合的に発揮する職種です。
C言語やRTOSなどの基礎に加え、通信プロトコルやセキュリティといった応用スキルを磨くことで、幅広い分野で活躍の場を広げられます。
経験を積みながらこれらのスキルを体系的に高めることで、確実に市場価値を上げ、キャリアの選択肢を広げていけるでしょう。




